フォーラム富山「創薬」(会長・齋藤滋富山大学長)の第56回研究会 (11月8日、於:ホテルグランテラス富山)が開催されました。
今回は、「くすりのシリコンバレーTOYAMA」創造コンソ―シアムとの合同研究報告会として『未来へ羽ばたく”くすりの富山”の医薬品開発研究』をテーマに、くすりコンソで支援している富山大や県立大などの研究者が進捗報告を行いました。
名古屋大学の天野学先生が特別講演を行い、また富山大学大学院生らの研究報告も行われ、企業や大学の研究者、学生約90名が対面とオンラインで参加しました。
催事名:フォーラム富山「創薬」第56回研究会
現地開催期間:令和4年11月8日(火曜日)
会場:ホテルグランテラス富山(富山市桜橋通り2-28)
主催:フォーラム富山「創薬」
リンク:フォーラム富山「創薬」 | 富山大学 (u-toyama.ac.jp)
■特別講演
医療イノベーションの創出をめざして
-産学官連携による研究開発の推進における課題-
名古屋大学 医学部附属病院 先端医療開発部 先端医療・臨床研究支援センター 特任教授、富山大学 学長特別補佐
天野 学 先生
富山大学の学長特別補佐として、くすりコンソ事業にお力添えをいただいている天野先生による特別講演では、我が国の医療イノベーション創出において重要性を増すアカデミア創薬をテーマに、その取組みの背景・経緯やこれまでの実績などを概観しつつ、医薬品の実用化のために欠かせない「企業との連携」に関する課題について具体的にお話しいただきました。
アカデミア創薬を推進するにあたっての大学研究者の心構えや大学改革の重要性など、アカデミア創薬を支援するプロジェクトマネージャーとしての立場から多くの示唆があり、くすりの富山県の今後の発展に大いに参考となる講演でした。
■くすりコンソ研究報告
環境調和型医薬品製造のための植物由来有機分子触媒の開発
富山県立大学 工学部 生物工学科 准教授 日比 慎
植物由来の多糖類が不斉有機分子触媒として機能するという世界初の発見について報告しました。また、触媒機能を発揮する構造以外を除去するための低分子化にも成功しています。
医薬品中間体製造に必要な活性を有するこの新たな触媒は、環境に優しくSDGsの観点からも理想的といえます。今後、様々な分野での応用が期待されます。
小児や高齢者が服用しやすいミニタブレット製剤の開発
〜高精度でかつ機能性の高いミニタブレット用杵臼の開発〜
富山県薬事総合研究開発センター主任研究員 永井 秀昌
一般の大きさの錠剤を飲み込めない年齢の小児や、嚥下がしづらい高齢者向けに、次世代の剤形であるミニタブレットが医療関係者の関心を集めています。このミニタブレットを高精度に打錠するための杵臼の開発、及び小児用ミニタブレットの試作結果について報告しました。
この開発の取組みによって、服薬アドヒアランスの向上に貢献していきます。
医薬品製造品質管理における迅速無菌検査法の開発
富山大学 学術研究部医学系 臨床分子病態検査学講座 准教授 仁井見 英樹
独自に開発した迅速無菌検査法を医薬品の製造工程へ応用することで、従来は1週間以上かかっていた製品出荷前の無菌の判定を、わずか数時間~24時間程度で確認できるようになります。
実際に製薬企業から提供された無菌製剤を用いたフィージビリティスタディの実施など、品質管理の効率化に役立てるための取組みについて報告しました。
この技術は、再生医療に用いる細胞や食品工場の製造工程における無菌検査にも応用できるので幅広い分野での活用が期待される技術です。
免疫代謝の調節による生活習慣病の予防研究
富山県立大学 工学部 医薬品工学科 教授 長井 良憲
メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を引き起こす原因となる様々な臓器の慢性炎症について、その鍵を握るインフラマソームを阻害するイソリクイリチゲニンを含有する生薬甘草の研究について報告しました。
新規に開発した甘草エキス末に、肥満や2型糖尿病の発症予防効果や善玉腸内細菌の増加作用などがあることを見出し、新しい機能性表示食品素材としての製品化を目指しています。
富山発芍薬甘草湯による医師主導治験と臨床インパクト
富山大学 学術研究部医学系 産科婦人科学講座 教授 中島 彰俊
様々な癌の治療に用いられている抗がん剤であるパクリタキセルが引き起こす筋肉痛や関節痛といった副作用は、通常の鎮痛剤が効きづらく臨床上の大きな問題となっています。
この副作用の軽減を目指すため、漢方薬「芍薬甘草湯」による疼痛緩和効果を確認し適応拡大の承認を得ることを目的として、富山大学では初となる医師主導治験に取り組んでいます。