芍薬甘草湯で抗がん剤の副作用を軽減~富山大初の医師主導治験~

研究リーダー

中島 彰俊 教授

【研究テーマ名】

パクリタキセル誘導筋肉痛・関節痛に関する芍薬甘草湯の効果に関する医師主導治験

【背景】

多くの薬剤開発は多額の開発費用をかけ企業によって行われますが、医師主導治験では、医師自らが薬の有効性を示すための試験計画から、最終的な解析までの全てを行うことで、医師の視点から患者さんが最も困っている事を直接解決するための薬開発が行えます。

これまで漢方薬の効能は古典に記載されている効果を元にして適応症が決められていました。そこで、和漢医薬学総合研究所を持つ富山大学において、漢方薬の一つである芍薬甘草湯がパクリタキセルによる筋肉痛・関節痛の副作用を軽減することを科学的に実証するための医師主導治験を行うこととしました。芍薬甘草湯の本薬効について、国の認可を得ることで、医薬品の中での漢方薬の存在を高め、国内での使用を増やし、さらには海外でも信頼される薬剤となることも期待されます。

【研究の内容】

パクリタキセルは卵巣癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、子宮体癌、食道癌、子宮頸癌などに使用される抗がん剤で、日本では年間40万人の患者さんに投与されています。パクリタキセルによる筋肉痛・関節痛は治療を受けた患者さんの30-40%に起こりますが、通常の痛み止めでは防ぐことが難しく、患者さんの生活の質を下げる大きな要因となっています。富山大学産科婦人科学講座の婦人科グループは、以前よりその副作用を軽減できる薬の探索を行い、漢方薬である芍薬甘草湯がパクリタキセルによる筋肉痛・関節痛の軽減作用を有する可能性を報告してきました。パクリタキセルを投与された卵巣がん患者を対象とした研究では、芍薬甘草湯を服用することで筋肉痛・関節痛が軽減し、痛みを感じる期間が半減したという結果が得られています(図1)。ただ、漢方薬を用いた治験というものは当時(約20年前)行われておらず、新しい適応症を国に申請・受理されるのは非常に困難でした。

そこで、パクリタキセルによる筋肉痛・関節痛の副作用を軽くできるかを検証することを目的として、富山大学では初めてとなる医師主導治験の実施を目指し、2020年からくすりコンソの支援により、芍薬甘草湯研究を約20年ぶりに再始動しました。多くの薬開発は企業によって行われますが、多額の開発費がかかるため、企業にとって利益の高い薬剤開発が優先される傾向にあります(図2左)。一方、今回の医師主導治験では、患者さんのニーズ(パクリタキセルによる筋肉痛・関節痛がつらい)に対応すべく医師自らが芍薬甘草湯の有効性を示すための試験計画の立案・国への計画の届け出・実施・管理・試験結果の解析までを行うことで、市場原理に必ずしもとらわれずに、患者さんに薬を届けることを目的としています(図2右)。

くすりコンソの支援を受け、富山大学附属病院臨床研究管理センター(戸邉一之センター長、寺元剛特命教授)協力の下、医師主導治験実施のための体制作りを進めるとともに、計画の立案、医薬品医療機器総合機構の審査を経て医師主導治験開始までに約1年半の年月を要しました。パクリタキセルは婦人科癌のみならず、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、食道癌などにも使用される抗がん剤であることから、本治験では富山大学附属病院第一内科(戸邉一之教授、猪又峰彦診療准教授)、消化器・腫瘍・総合外科(藤井努教授、松井恒志助教)臨床腫瘍部(林龍二教授、梶浦新也助教)、泌尿器科(北村寛教授)、和漢診療科(嶋田豊教授、柴原直利教授)、病院薬剤部(加藤敦教授)の複数科の力を合わせることで、日本でも数少ない漢方薬を使用した医師主導治験を2021年12月に開始しました。この治験を成功させ、全国のパクリタキセル投与で辛い状況を強いられているがん患者さんに1日も早くこの薬、芍薬甘草湯を届けたいと考えています。

【研究成果の公表】

○学会・シンポジウム・セミナー等でのイベントでの発表

フォーラム富山「創薬」2022.11.8

○テレビ・新聞・書籍・Web等各種メディアへの投稿、報道

北日本新聞 薬都プライド 楓との約束シリーズ第23回「医師自ら治験で評価」2022.3.18

◆用語解説

医師主導治験:医師自らが薬の効果を検討するための計画・実施・管理の全てを行う試験(治験)のことをいいます。本治験の利点は、医師の視点から患者さんが最も困っている事を直接解決するための薬開発を行える点にあります。

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