注射剤に替わる、吸収性に優れた使いやすい口腔粘膜吸収製剤を開発

教授

酒井 秀紀

【研究テーマ名】

注射剤・経口剤の粘膜吸収製剤への応用

【研究背景】

口腔粘膜吸収製剤の特性は、初回通過効果を回避できること、経口投与に比べ即効性が期待できること、注射剤の投与時の痛み、誤投与が起こった場合の副作用リスクを回避できることなどが挙げられます。
救急薬品工業株式会社(事業本部:富山県射水市)は、厚さわずか数十ミクロン(1ミクロンは1ミリの1,000分の1)に有効成分を含んだ「口腔内フィルム製剤」を世界で初めて製品化することに成功している独創的技術を有する企業です。
我が国では、合成オピオイドのフェンタニルのパッチ剤が、癌性疼痛の緩和に使われています。フェンタニルの過量投与に対する呼吸抑制等の副作用に迅速に対応するために、海外ではオピオイド拮抗薬ナロキソンの点鼻薬やオートインジェクター(筋肉内投与)が使用されています。今後、我が国では、在宅における癌性疼痛の緩和時のリスク回避がさらに重要となると思われます。
緊急時に点鼻薬を使用する場合、1)一個人であっても投与毎のばらつきが大きい、2)鼻腔内での投与薬液の流れに個人差がある、3)介護者が、患者に点鼻薬を正確に投与することは容易ではないことが考えられます。口腔内フィルム製剤であれば点鼻薬のデメリットを克服できる可能性があります。

◆用語解説

初回通過効果: 服用した薬物が全身へ送られる前に肝臓を通った際、肝臓に存在する薬物代謝酵素によって代謝されることを指します。初回通過効果により、全身循環する有効な形の薬物量は減ってしまいます。
口腔内フィルム製剤: 口の中の粘膜に付着させて、薬物を粘膜下の血管から吸収させ、全身に作用させることができる薄いシート状の製剤です。

 

【研究内容】

本研究では、オピオイド拮抗薬ナロキソンに着目し、患者にとってメリットが大きく優位性の高い口腔内フィルム製剤への実用化をめざした研究を行っています。また、口腔粘膜からの吸収が悪い薬物の吸収性を改善すべく透過性促進剤に関する検討も行っています。このために富山大学薬学部、救急薬品工業株式会社、富山大学附属病院が、密接な連携体制を構築しています。具体的な研究内容は以下のとおりです。
1) 救急薬品工業株式会社が、実験動物に使用する各種のナロキソン含有口腔内フィルム製剤および被検者を対象とした特定臨床研究に使用するナロキソン口腔内フィルム製剤を作製してきています。
2) 富山大学薬学部にて、実験動物の口腔粘膜(ウサギin vivo口腔内粘膜、ハムスター単離頬袋粘膜)におけるナロキソンの透過実験、透過性促進剤がナロキソンの透過に及ぼす効果などについて検討を行ってきています。
3) GLP (Good Laboratory Practice) に対応した施設で、非臨床試験「ナロキソン製剤のウサギを用いた口腔内累積刺激性試験」および「ナロキソンのウサギを用いた口腔粘膜投与における血中濃度測定試験」を行いました。
4) 富山大学附属病院での特定臨床研究「ナロキソン塩酸塩頬粘膜吸収製剤の臨床薬理試験」が、2022年12月14日にjRCT公開されました(臨床研究実施計画番号:jRCTs041220104)。これに基づき2023年1月から3月にかけて、附属病院にて特定臨床研究を行いました。

【研究成果の公表】

〇学会・シンポジウム・セミナー等イベントでの発表 

 フォーラム富山「創薬」第58回研究会, 2023.10.26(富山県富山市)

〇テレビ・新聞・書籍・Web等各種メディアへの投稿、報道

 国際医薬品情報 トップインタビュー「鎮痛や麻薬中毒分野で注目される口腔内フィルム製剤の即効性」<救急薬品工業 代表取締役社長 稲田 裕彦>2024年4月8日号<通巻第1247号>
 TBSテレビ〈THE TIME〉「今注目の「薬」 貼るだけ”飲み薬” 口腔内フィルム剤 世界初のフィルム型 どこでも持ち運び」2024.3.7
 北日本新聞「麻薬中毒者向け製剤 救急薬品工業が開発 富山大付属病院で試験 26年米市場投入目指す」2023.11.3

【今後の展開】

今後、口腔粘膜フィルム製剤のウサギでの試験結果から、ヒトでの薬物動態等の予測を行うことができる評価系を確立したいと考えています。また、ナロキソン含有口腔内フィルム製剤の実装化に向けて検討を進めたいと考えています。

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