「くすりのシリコンバレーTOYAMA」創造コンソーシアム アドバイザリーボード委員
皆さん、初めまして。
2024年から、くすりコンソのアドバイザー委員を務めております、秦純子と申します。
私はこれまで、30年弱にわたり経営コンサルティングの仕事に携わってきました。日本を代表する様々な企業の新しい事業づくりやマーケティング戦略に取り組み、最後の10年は、データサイエンスやAIを活用したコンサルティングにも関わってきました。

データサイエンスやAIというと難しく聞こえるかもしれませんが、私にとっては、多様な人の声や現場の実態を、見えにくいままにせず、より広く、より正確に取り入れていくための社会のインフラのような存在です。業界や技術は変化してきましたが、一貫して大切にしてきた考えは、「より多様な視点を活かすことで、取り組みや組織は進化していくはずだ」ということでした。
息子が大学を卒業した頃から、私自身の関心は少しずつ、「事業としての成功」から「社会全体がどう進化していくか」という問いへと重心が移っていきました。そうしたタイミングで最初にアドバイザーをとのお声がけいただいたのが、富山くすりコンソでした。
富山くすりコンソでは、富山大学とのDCT(デジタル臨床試験)に関する議論や、富山県立大学と連携した生産現場でのDX活用の立ち上げをサポートしてきました。現在は、ひっ迫する医療現場におけるAIの活用可能性についての議論も始まっています。
また、技術だけでなく、「何を成し遂げるためにこの組織は存在するのか」というミッションや、「どのようなマネジメントやプロセスで仕事を進めると、産学官、多様な立場の人たちが共に価値を生み出せるのか」といったガバナンスについても、コンサルタントとしての視点を持ち込みながら、議論に参加させていただいています。
2年前にコンサルティング会社から独立し、現在は介護サービスに取り組む日本ケアサプライの社外取締役として、介護・生活支援の業界がより良い場になるよう努めています。また、東京大学と深い関りを持つ若いスタートアップであるCitadel AIでは監査役として、AIが社会にとって信頼できる形で使われているかを検証する技術の社会実装を支援しています。昨今は、SEAMESをはじめ、若い世代が真剣に社会課題と向き合おうとするスタートアップやNPOの支援にも関わっています。富山、介護、信頼できるAI、大学、スタートアップ、NPOなど、さまざまな立場の方々と関わりながら仕事をする中で、地域も年齢も業種も価値観も異なる多くの人たちが、これほど真剣に社会のことを考え、行動しているのだと日々実感しています。
先日、「AIと社会課題」をテーマにした講演でお話しする機会がありました。
介護分野では、2040年に約280万人の人材が必要とされる一方で、すでに現場の6割以上が人手不足を感じています。介護記録の自動化や見守りデータの活用は、現場の負担を軽減しながら安全性を高める、現実的な選択肢になりつつあります。
また地方では、2020年から2050年にかけて約4割の自治体が消滅可能性自治体になると推計され、医療・交通・農業などの基盤維持が大きな課題となっています。遠隔医療やスマート農業、都市機能の最適化といった分野で、AIは「どう支えるか」を考えるための重要な基盤になり始めています。
こうした話の中で、私が強く訴えているのは、「誰がつくるかが未来を決める」という点です。
技術そのものよりも、それを設計し、使い、運営する人の価値観や視点が、社会の形を左右します。例えばAIの分野では、いまだに男性中心、米中中心といった偏りがあり、性別や国籍、年代、所得層といった面でも多様性は十分とは言えません。
翻って、この3年間、富山との接点を深める中で、私自身が現場で感じているのは、女性、海外出身者、異業種など、多様な人たちとのコラボレーションには、まだ広がる余地があるのではないかということです。
富山は、北前船の時代から外とつながり、置き薬や富山型介護といった独自の仕組みを生み出してきた、非常に豊かで革新的な土地です。その歴史と人の厚みを思うと、今後さらに多様な視点が交わることで、新しい価値が自然に生まれていく余地が大きいと感じています。
異なる視点が交わり、対話が生まれることで、富山はさらに進化できる。
くすりコンソを通じて、立場や分野を越えた対話を重ねながら、富山の次の姿を、皆さんと一緒に考え、つくっていけたらと思っております。