田島公認会計士事務所 代表 公認会計士・税理士
研究とは、まだ解決されていない課題に対して、新たな選択肢や可能性を提示する活動です。とりわけ医薬・創薬分野の研究では、その成果が、将来の治療法や患者の生活、ひいては社会全体に影響を与える可能性を持っています。
研究者の矜持は、研究活動の先にある「誰かの役に立てる」「社会全体を変えられる」という実感にこそあるのではないでしょうか。ここ富山で進められている研究には、その学術的価値はもちろんのこと、地域産業の未来につながることへの期待が込められています。
私は、公認会計士として「くすりのシリコンバレーTOYAMA」創造コンソーシアムにおける研究費の監査を行なっています。
「監査」という言葉からは、研究の自由を縛るもの、といったマイナスの印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私はむしろ逆のことを感じています。即ち、「研究費の使い方が適切であることは、研究の自由と価値を守るための重要な基盤である。」そして監査はその重要な基盤を保証する、ということです。
◆「不正をしない」だけでは足りない
研究費の不適切使用というと、架空請求や私的流用といった明確な不正行為を思い浮かべがちです。もちろんこれらの行為は論外です。一方、監査の現場で感じるのは、次のようなグレーなケースです。
・研究目的との関係が第三者に説明しづらい支出
・公的資金の執行にあたり求められる手続きや記録が十分に整っていないケース
・予算消化に重点が置かれ、支出そのものの必要性が十分に検討されないまま進められているケース
これらはもちろん悪意から生じるものではありません。しかし、第三者から見たときに説明できないという点で、研究の信頼性を損なうリスクをはらんでいます。
◆研究費の透明性は研究の価値を高める
監査を通じて強く感じるのは、「研究費の管理が丁寧な研究室ほど、研究そのものの説得力も高い。」ということです。
・なぜその支出が必要だったのかが明確に言語化されている。
・記録や証憑が整理され、支出の経緯をたどることができる。
・研究計画と資金執行が無理なく結びついている。
こうした研究は、「なぜこの研究に資金を投じたのか」「その結果、研究はどこまで進んだのか」を明確に説明することができます。それは、研究者自身を守るだけでなく、大学や研究機関全体の信用を高めることにもつながります。
研究費の管理は、研究の本質そのものではないかもしれません。しかし、「研究の価値を社会に届け、次の支援へとつなげる重要な橋渡し」であることは間違いありません。
◆監査は「伴走者」
私は、監査の現場において「ミスを探す人」であるよりも、「一緒に考える人」でありたいと思っています。
研究の自由と創造性を最大限に尊重しながら、その成果が社会から正当に評価され、次の研究へとつながっていく。その循環を支える一助として監査は位置づけられると考えています。
「研究活動を通じてより良い社会を、未来を実現してほしい」という人々の願いを形にするために、公認会計士として少しでも役に立ちたいと思っています。そして、富山発のイノベーションが力強く世界へ羽ばたくことを心から願っています。