北陸銀行 法人ソリューション部 地域創生室 シニアフェロー
2019年3月、「くすりのシリコンバレーTOYAMA」創造コンソーシアム(通称:富山くすりコンソ)に研究評価委員として関わり始めた。国の交付金による5年間の支援が2022年度で一区切りとなり、組織は“自走期間”へ。そこで委員は卒業——のはずだったのだが、2024年3月からアドバイザリーボード委員として再び声がかかり、気づけば8年目に入ってしまった。縁とは不思議なものだ。
初回の委員会は今も忘れない。湊先生(当時・京都大学副学長、のち総長)を筆頭に、各分野の第一人者が並ぶ席で、工作機械メーカー出身、のち銀行員へ転じた私は、どう考えても“場違い”だった。専門的な議論は先生方にお任せすると割り切り、私は銀行目線で「事業化できるのか」という一点に絞って評価させていただいた。
すると、創薬の現実が立ちはだかる。病気の研究から始まり、薬のタネを見つけ、効果と安全性を確かめ、製品として世に出すまで——関門が多く、難易度も時間も桁違いだ。つまり資金も莫大に要る。製造業の「開発」と同じ感覚で語れないことを、遅ればせながら理解した。良いものを作れば売れる、では済まない。時間と確率と資金が、同時に問いかけてくる世界だった。
それでも再登板を引き受けたのは、富山くすりコンソが蒔いた種が育つところを見届けたかったからだ。成果が出るまで時間のかかる領域だからこそ、支援が終わった後の数年に組織の真価が表れる。そこから目を離すのは、もったいない。
富山は「くすりの富山」と言われながら、実態としては大手の下請け的な中小メーカーが多い。一方で、富山大学には和漢医薬学総合研究所があり、県立大学には医薬品工学科もある。頭脳も手もあるのに、自分の足で歩き切れていない——研究の“頭”と製造の“手”をつなぐ連結部がいるのでは。富山くすりコンソが産学官の連結器となり、「ものづくり県」から研究開発・創薬まで見据える「薬都とやま」へ。壮大な夢ほど、追う価値がある。