「生薬甘草の成分が、NLRP3遺伝子変異によるNLRP3インフラマソームの恒常的な活性化を阻害することを発見」
富山県立大学 工学部医薬品工学科の長井良憲 教授がリーダーを務める研究グループは、生薬甘草成分のひとつであるイソリクイリチゲニン(ILG)が、カスパーゼ1の活性化と変異NLRP3の凝集を抑制することにより、NLRP3インフラマソームの恒常的な活性化を阻害することを見出しました。
NLRP3の遺伝子変異によって引き起こされる自己炎症症候群「クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)」は、IL-1βが過剰産生されることを原因とする疾患であり、このことからILGが将来的にCAPSの治療薬候補になりうることが期待されます。
この研究グループには富山県薬事総合研究開発センターから髙津聖志 所長と本田裕恵 課長、高山信幸 主任研究員が参画しています。この研究成果は、2024年2月17日に国際学術雑誌「Genes to Cells」オンラインに掲載、発表されました。
本研究は、「くすりのシリコンバレーTOYAMA」創造コンソーシアムがサポートする研究テーマのひとつです。
論文タイトル
Isoliquiritigenin inhibits NLRP3 inflammasome activation with CAPS mutations by suppressing caspase-1 activation and mutated NLRP3 aggregation
論文サイトはこちらから
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/gtc.13108
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【用語解説】
クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS):
自然免疫に関与するNLRP3遺伝子の変異を原因とし「難病」に指定されています。炎症応答を制御する分子複合体であるインフラマソームの活性化により炎症性サイトカインIL-1βが過剰産生され、炎症を引き起こすとされています。このため発熱や関節炎などの症状が現れ、重症の場合には慢性髄膜炎や中枢神経障害を引き起こす場合もあります。CAPSの日本における患者数は100人程度※と推定されています。
※難病情報センターHPより https://www.nanbyou.or.jp/entry/3994